FanWorks X Toon Boom アニメーションのデジタル制作のメリットとは?

ブログ 〜によって RealCRO
2023年04月21日

FanWorks X Toon Boom アニメーションのデジタル制作のメリットとは?

〜 Storyboard Pro を活用した『おばけずかん!』コンテ制作 〜

今回は、株式会社ファンワークス制作、テレビ東京系列「おはスタ」内のテレビアニメ『おばけずかん!』について、イワタナオミ監督、制作進行のファンワークス西山さん、絵コンテ・演出担当のファンワークス松井さんにお話を伺いました。ファンワークスは、日本のスタジオの多くがペーパーアニメーションを取り入れている中で、珍しくデジタルアニメーションをメインとするスタジオです。このインタビューでは、今回の制作で目指したビジョンや、それを実現するのにどのようにToon Boomの絵コンテソフトウェア・Storyboard Proが役立ったのか、またアニメーションのデジタル制作のメリットについてお伺いさせていただきました。

Ghost Book ©斉藤洋・宮本えつよし・講談社/「おばけずかん!」製作委員会

アニメ『おばけずかん!』とは?

アニメの原作となる「おばけずかん」シリーズ(作・斉藤 洋 絵・宮本えつよし/講談社 刊)は、ユニークなおばけたちが数多く登場する、シリーズ累計150万部を突破した子どもたちに大人気の童話シリーズです。
テレビ東京系列にて放送中のキッズ向けバラエティ番組「おはスタ」内「きゃらスタ」にて、本作を映像化。

アニメオリジナルキャラクターのヒロシと化け猫おばけのミーニャンが「おばけずかん」を完成させるため、さまざまなおばけと出会う物語。毎話ユニークなおばけたちが登場するのが楽しい作品です!

作品を作るにあたって、こだわったことはありますか?

監督:背景コンセプトと舞台設定に約2カ月間かかりました。原作がある作品をテレビシリーズ化する場合、原作者の了解を得るのに大変なことが多いのですが、『おばけずかん!』の場合は自由度が高く、新しいキャラクターを作ることができたのが幸いでした。その結果、基本は原作と同じですが、違う部分も多くあり、独立した作品になっていると思います。

また、キャラクター作りにも時間をかけました。実際見る視聴者が子供たちになるので、キャラクターにメリハリをつけ、わかりやすく、軽快な雰囲気になるよう心がけました。加えて、朝の番組なので、暗く怖くはしないように、あくまでもポップで明るくというのをベースに作るようにしました。その中で、このシリーズではレトロで昭和な雰囲気にこだわっていて、また、パワーパフガールズのように、子供向けだけど大人も楽しめるようなアメリカのアニメのスタイルも取り入れました。

各話のアニメーションは、できる限り自由な発想でアニメーターにアニメーションをつけてもらうことで、より面白く、よりオリジナルな作品になると考えました。そのため、担当アニメーターには、統一感を持たせつつも自分なりにアレンジをくわえてもらってもいいですし、楽しみながら「おばけずかん!」に携わってもらえるようにしました。

企画スタートから制作が動き出すまでのスケジュールはいかがでしたか?

西山さん:2019年の夏にお話をいただき、企画開始は10月頃でキャラクターデザインや舞台設定などを作り始めました。2020年の1月から制作を開始したのですが、春にはもうコロナで自粛が始まったので、途中から全てリモートでの制作に変わりました。ですが、ファンワークスは元々、個人のクリエイターの方とお仕事することも多く、ご一緒させていただいているクリエイターの方々が様々な場所にいらっしゃり、仕事仲間が近くにいないことも多くあったので、コロナ以前でも、すでにほとんどのパイプラインがデジタル化されていました。そのため、実際に顔を合わせないままのチームメンバーも何名かいらっしゃるような状況でのデジタル制作だったのですが、オンラインの作業環境にすんなり移行することができ、コロナ禍でも支障が出ることなく最後まで制作を進められました。また、紙の受け渡しの必要ないデジタル制作だったので、パソコンさえあれば制作できるというメリットがあったことが大きかったと思います。

今回の制作でStoryboard Proを使用していただいているとお聞きしましたが、『おばけずかん!』で初めてお使いになられのですか?

松井さん:そうですね、仕事で本格的に導入したのはこれが初めでした。今までPhotoshopでずっと絵コンテを制作していたのですが、 不便だなと感じるところがどうしてもあり、それを解決できないものかなとずっと思っていました。そこで、絵コンテ制作専用のソフトがあると聞き、興味があってセミナーに行ってみたのが始まりでした。セミナーで聞いただけでも、シンプルで分かりやすいソフトウェアだというのはすぐ理解できて、その後すぐに仕事で導入することができました。細かいところでわからないことはいくつかあったのですが、また別日のToon Boomさんのセミナーに参加する中で、各機能がどのように機能するのかがわかってきて、時間がかからずにStoryboard Proに慣れ親しむことができました。

Storyboard Pro を実際に使われて感じた、Storyboard Proでのデジタル制作のメリットはありますか?

松井さん:Storyboard Proの最も便利な点は、1つのソフトでアニメーションを作成でき、自分がイメージしたアニメーションにすぐにたどり着けるということです。Storyboard Pro を使う前は、PhotoshopやAfterEffectsなど複数のソフトを使う必要があり、それらを交互に使うのは手間がかかるものでした。Storyboard Proを使うと、セルの移動・拡大させながら、想像したカメラワークをつけることで、すぐにカットの動きのプレビューが出来て、最終的な映像とほぼ変わらないほどのクオリティを確認出来るのが嬉しかったです。また、Storyboard Proでしかできないような出力方法もたくさんあり、アニメーション制作チームのコミュニケーションの面においても助けられました。Storyboard Proでは、絵コンテPDFを書き出せることで、ビデオコンテでは読み取れなかった演出の意図・演技の指示などを文章で指示を残せるため、アニメーター、背景美術などのセクションが分かれたメンバーにも、正確に演出の情報を伝えることができました。やはり絵コンテに特化しているソフトウェアなので、絵コンテ作る側のディープな要望に応えられるように作られていると思います。

Storyboard Storyboard Proの絵コンテ上でのコミュニケーション

紙ベースの制作と、デジタル制作の違いは感じられましたか?

監督:そうですね、連携がすごく早くなったように感じました。中でのやり取りがすごいスピーディーに、スムーズにできるようになりましたね。個人的には、デジタル制作の際は、保存をしない限り下書きが残らないので、毎回セーブをすることだけは少し気をつけない、と思っています。

松井さん:レイアウトを書き出しするときに自動的に最小フレームをフルHDサイズとして計算したPSDを書き出すことができるため、解像度が足りなくなることがなかったり、カメラフレーム外の無駄な部分を描かずに済んだりということが、Storyboard Proを使うことで解消できた悩みでした。無駄を出さない、効率のよい制作ができたのはアナログ制作との大きな違いだと思います。

西山さん:デジタル制作では、どこに住んでいるクリエイターさんともお仕事ができ、活動範囲に制限がかからないことに、制作スケジュールを立て進めていく中でもメリットを実感しました。海外にお住まいの方とお仕事をしていたとしても、デジタル制作のおかげで、コミュニケーションにも支障が出ず、とても便利に感じました。

Storyboard Storyboard Pro でこそ演出できる構図とカメラワーク

今回のインタビューを通じて、こだわりの詰まった『おばけずかん!』の世界観をチームで表現するために、コミュニケーションや技術面において、Storyboard Pro がどう活用されていたのかを実体験をもとにお話しいただきました。また、アニメーションのデジタル制作のメリットについても感想をお聞きすることができました。ファンワークスでは、早い段階からデジタルアニメーションを導入されており、今となっては、紙のアニメーションに戻ることがいかに難しいかと実感されていると思います。Toon Boomのソフトウェアは、ディズニーやカートゥーンネットワークなどの大手スタジオでも多く使用されており、世界規模で見ると2Dアニメーション業界の中一番使われているソフトウェアです。日本でもStoryboard Proが多くの人に広がることで、より良いアニメーションを、より簡単に、より効率的に作れるようになるのではないでしょうか。

イワタナオミ監督、西山さん、松井さん、インタビューにご協力いただき、貴重なご意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
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